着物の価格は難しい?①
着物の値段ってあってないようなもの?
確かに着物の適正価格はいくらなのでしょう。
不思議なのと同時にそれが「着物は怖い」と思われる原因の1つですね。
では、値段の高いお店と安いお店では置いてある着物自体が違うのでしょうか?
「いえ、決してそうとは限りません」
元々の品揃えのコンセプトの違いで、高級な品しか扱わないお店と、お手頃でリーズナブルな物を専門に扱っているお店とは当然置いてある物は違いますが、同じ産地の同じランクの着物でもお店によってかなりの価格差があります。
一体どれくらいの違いがあるのか
これは、本当にあった実例です。
A問屋さんが、B呉服店さんの催事に帯を貸し出し、A問屋の営業マンはB呉服店に販売応援に入りました。
その帯は、とても個性的でひと目見たお客様は気に入り A問屋の営業マンの「この帯はとてもお値打ち価格なんですよ!」の一言もあり、約30万で購入されました。
その後、お客様がその帯をネット検索すると……
…なんと…
38,000円で他のネットショップで販売されていました…
その差 約8倍
その帯は返品になったのですが、A問屋さんもB問屋さんも決して悪気があったわけでも暴利を貪っていたわけでも有りません。
でもお客様の信用は落ちてしまったでしょうね…
では、何故こんなに値段の違いがあったのでしょう。
ここからは私の推測です。
【まず38,000円で販売されていたネットショップの場合】
帯のメーカー出し25,000円→問屋出し30,000円→38,000円で販売
※全て買取商売
【30万で販売されていたB呉服店の場合】
メーカー出し50,000円→問屋出し100,000円→300,000円で販売。
※全て貸し出し商売(委託販売)
どこか違うのか
「ネットショップの流通は全て買取り商売」に対して、「B呉服店は委託(商品を借りる)商売」だという所です。
※ネットショップの流通経路は推測ですが、B呉服店の経路と価格は実際にA問屋さんから聞いたので事実です。
同じ商品でも買取りするのと委託販売するのとでは全く価格が変わってしまうんです。
そこに、ネットショップと店頭の通常販売の利益率の違いも加わりこんなに値段差が出てしまいました。
そもそも着物の価格がわかりにくいのは、色んな店を比較するのが難しいからです。なので、販売店は自分の好きなように売価を付けますし、お客様は他のお店で同じ品を比較する事が難しいので、付いている売価を信じるしかなかったのですが、今ではネットショップもあり検索すれば直ぐに比較出来てしまいます。
※中にはネットでは決して売っていないような物も有りますが。
どんな着物や帯でも製造コストは必ず存在します。それがどんな経路と条件で取引され、最終販売店がいくら儲けるかで価格が決まるのです。
【やっぱり着物の値段は難しい】
それが結論です。色んなお店を廻って 見て聴いて、ネット検索などもしているうちに何となく価格相場はわかってくるかも知れません。
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着物の価格は難しい②
着物の値段はあってないようなもの?
①では、取引条件の違いで同じ商品が8倍もの価格差になってしまった事例をご紹介しましたが、今回は販売形態の違いによる価格の違いについて考えてみます。
皆さんはどんなお店で着物を購入されていますか?
・呉服専門店
・ショッピングモールに入っているチェーン店系の呉服店
・百貨店
・通信販売(オークション含む)
・バザーや骨董市
・その他
ざっくり分けるとこんな感じでしょうか。(スポットガーデンは呉服専門店と通信販売 両方の分類に入ります)
それぞれ特色が有りますが、私が見る限り 1番価格が安い(中古品は除く)のは ネットオークションです。
個人売買の中古品オークションではなく、店舗形態のところが出品されている新品のオークションです。
何らかの事情で早くさばきたい為、原価もしくは原価割れで販売されている場合も多いのではないでしょうか。
目利きが出来れば必ずお得です。
次にネット通販 が続きます。
価格を他のショップと比較されやすいので価格競争になり安くなります。
呉服専門店やチェーン店、百貨店はそれぞれ店舗カラーによっても異なるので一概には比較しにくいですが。
・百貨店は比較的 納得の価格設定になっていますので私も参考の為、調査に行くことが有ります。
・チェーン店系や専門店などは付いている価格と実際に販売する価格が違う(値引き販売する)ので分かりにくいですが、割引販売前提のお店は値札表示価格は高く設定してあります。
価格の差は、その店舗が維持継続していく為にいくら稼がないといけないかで変わります。
人件費や店舗家賃 広告宣伝費 配送料などお店の運営には経費が掛かります。その経費が高いところは沢山儲けなくてはいけませんし、経費が安ければ薄利でもやっていけます。
そういう意味では、ネットショップは自宅を使えば家賃が掛かりませんし、少ない人員でも運営していけます。
広告宣伝費が思いのほか必要なのと、モールや運営会社への手数料もかかるので、全く経費が掛からないというわけでは無いですが、実店舗よりは低い経費率で運営出来るのが一般的です。
・
【着物の価格は難しい?】
難しいです…
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着物の価格は難しい?③
本当に着物の値段って何を基準にすれば良いのかわからないのではないでしょうか?
知らないお店に入って値札を見るのも怖いですね^^;
スポットガーデンは安いと思って頂いているお客様に、『普通はどの位のお値段ですか?』と参考価格を尋ねられる事が有りますが、答えに困ります。
正直、同じ品でも売っている店や場所によってかなりの価格差があるからです。
例えば全く同じ商品が、ネットショップなら10万 〇〇呉服店なら20万 △△呉服店なら40万 何処かの特別会場での展示会なら30万という具合です…
前回、前々回の記事で触れたように、流通経路や取引条件、またお店の経費構造などの違いから極端な価格差が生まれるのですが、実はもう1つ値段の差が出る理由が有ります。
それは、お店に付いている値段は値引きを前提としている場合が多いという事です。
昔ながらの風習とでも言いましょうか、着物業界では未だにお客様によって値段を変えるような値引き販売が行われています。
中には、付いてる価格の半額からスタート なんてお店も存在します。
つまり、最初から値引き販売を前提としている為に、値札売価が高額になっているんです。
『割引幅を大きくしようと思えばより高い値段を付ける』
店によっての値引き幅の違いが値札売価の差に繋がって来ますし、もちろん百貨店やネットショップなど表示されている価格ズバリの場合もあります。
本当に着物の値段は難しいです。
信頼出来るお店を見つける事が1番の解決策ではないでしょうか☆
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着物の価格は難しい?④
シリーズ④は前回チラッとお話しした『値引き販売』についてです。
最初から値引き販売を、前提とした時…
お店はどうするか…
簡単な話です☆ 表示価格を高くするだけです。
数年前の話ですが、私がまだ会社勤めの頃の話をご紹介します。
大阪中心部にある商店街のとある呉服屋さんに入りました。
ふと陳列されている名古屋帯を見ると 『78万』という表示が目に留まったのですが、その名古屋帯…
ついその先日 私が38,000円で仕入れたものと同じメーカー同じランクの商品で、色柄は違えど間違いなく同シリーズの名古屋帯でした。
☆☆☆仕入原価の約20倍…☆☆☆
私が知る限り、その名古屋帯は一般的な展示会価格23万 店頭価格 13万ほどで売られているものなので、正直驚きました。
ジッとその名古屋帯を見ていると、若い男性店員さんが私に声を掛けて来ました。
『表示価格は参考価格なんで、半額になりますよ!』
78万の半額→39万
それでも原価の10倍…
いったいどこの参考価格??
おそらく私が興味を示せば更に割引して、最終的にはいくらになったのかはわかりませんが。。。
値引き文化? 値切り文化?
大阪はそういう文化が有るのかもしれませんが、本当にそれで安く買えたというのでしょうか(・_・;
【着物の価格は難しい?】
難しいです…
このシリーズはここまで。
スポットガーデン店主 ちくま かずゆき