着物をローンで買ってはいけません。

2018/11/08

スポットガーデン 筑摩和之です。
着物は魔物
財産を食い潰すだけでなく命まで奪うこともあります。
今回のつぶやきは重い内容ですが先日SNSのある投稿記事を見てどうしても呟かずにはいられなくなりました。
その投稿記事の内容を要約します。

小さなお店を営んでいる50代の女性が突然 自ら命を絶たれました。
ご家族も思い当たる節がなく何故?と首をかしげます。
思えば近頃様子がおかしかったようですがその理由はわかりません。
よくよく調べてみると、1000万円を超えるローンを抱えていたことがわかりました。
今まで質素な生活をされていたのにこれ程のローン。
何故?
ローン明細を見ると、全て着物を購入したものばかり。一回の購入金額が100万円を超える明細も。中には2日しか空けずに次のローンが組まれている。
そしてタンスには着た形跡がない仕付け糸がついたままの沢山の着物が。

着物をローンで購入し、その返済苦に陥った結果、自ら・・

という内容の投稿記事です。

何故こんなローンを組んでしまったのか。
その投稿では、販売した呉服屋の店員がその女性が営んでいるお店の常連さんであった為、付き合いで断ることが出来なかった。そしてそもそも収入に対して本来は組めるはずもない高額なローンを組ませたローン会社が悪だ。とつづられていました。

ローン会社は返済能力のないものにはお金を貸さないのですが、なぜか記入が必須である収入やローン残高を記入する欄は空白だったようです。

私はローンの世界は素人なので何故 返済能力のない人にお金を貸したのかはわかりません。返済出来なければ自社の損害になるのですから。
着物販売の業界はクレジットカード会社から目をつけられています。事実、私が店舗開業の際クレジットカード決済代行業者に利用申請し断られた経緯があります。現在契約している決済代行会社さんいわく、着物販売は消費者が代金を支払わらないというトラブルが他の業種に比べて多いのだそうです。これは返済できないのではなく、無理に買わされキャンセルしたいから支払わないという事例が多いようです。カード会社は返済が滞った場合、商品を売った小売店に請求することできません。カード支払いを承認した以上、消費者とカード会社との問題となります。当然、商品代金はカード会社から小売店に支払われていますから売った方は取引完了ということです。

こよのように着物をローンで購入しその返済に困っておられる消費者さんは多いでしょう。クレジットカードの場合はさほど多くない借り入れ枠が設定されていますが、ローンの場合は先の事例のように1000万を超えてしまうほどの借り入れが可能のようです。当店ではローンを扱っていないので分かりませんが、審査が甘いローン会社もあるのでしょう。

今回のSNS記事ではローン会社に批判の矛先が向かっていましたが、同様に販売した呉服屋にこそ重い責任があるのではないでしょうか。
いったいどれほど着物を売れば1,000万以上にもなるのでしょうか。確かに1点で1,000万を超えてしまうような着物も存在します。しかし、そんな商品は殆ど有りません。またそういった品を購入出来るのはほんの一握りのお金持ちだけ。
数十万の物を次から次へと売り付けたのしょう。そしてそういう呉服屋は絶対に高く売っているに違いありません。法外な値段を付けて大幅値下げをする。それでも高いのです。
良心的な呉服屋ならそんなローンの組ませ方は絶対にしません。
人は見かけによらないとも言いますので、一見質素に見えて実は裕福だという可能性もあります。実際に、ちょっと近所へお買い物という洋服を着たお客様が数百万もする着物を一度に購入されたという話を聞いたことが有ります。しかしそういった場合は必ずといっていいほどキャッシュ、またはブラックカードでお支払いされローンなどは組まれません。
ですからこの犠牲になられた方がさほど裕福ではないのは呉服屋も分かっていたはずです。いえ、そんなことすら関係ないのかもしれません。購入される方にはハイエナのように近づきローンを組ませればこっちのもの。消費者さんからすれば現実に預金通帳から購入分の金額が一発で消えるわけではありませんので重ねて次のローンを組んでしまう。そのうち感覚が麻痺してきます。呉服屋は最初から麻痺していますから審査を通すことに必死になります。一方、購入されないお客様には例えお金持ちであったとしても見向きもしないんです。
投稿では非難の矛先をローン会社に向けていましたが、もっと非難されるべきはその呉服屋です。
当の呉服屋から言わせると、お客様自身が購入を決められローン審査も通ったのだから自分達には責任はないというでしょう。
ひと昔まえに横行した悪徳呉服屋の無理な売り方も法によって規制され、3人以上で1人のお客様を囲い込んで接客してはいけないという決まりが出来ましたし、確か30万円以上のローンを組んだ場合は後日に再度消費者の元に電話をし、本当に購入されるかの最終確認するようになりました。
余談ですが、自宅にローン会社から電話が入るのはマズイというお客様が非常に多いという事がわかり30万以下の物しか売れないと言った事態に陥ったんです。
ですので、今回犠牲になられた方が何故そこまでの借入をしたのか、出来たのかが今ひとつ分からないのも事実です。※いつ起きた話なのかが分かりませんので、一昔前の非常にブラックな販売方法が横行していた頃かもしれません。

そもそも着物ってローンで買うものなのでしょうか?
私が言うローンとはクレジットカードの分割枠がなく、更に多額の借り入れが可能だから利用するといったものです。
確かに一括支払いが厳しい時にローンは便利です。私も車のローンを支払っています。
このローン返済が終わるまで絶対に次のローンを組まないという強い意志や、一生で一度の贅沢でどうしても手に入れたい着物がある。という理由であれば理解できないわけではありません。
でも、着物好きな方ならよくお分かりだと思いますが、着物は1着あれば満足というものではありません。見れば見るほど次から次への欲しいものが増えてきます。そんな時にその都度ローンを組めてしまったら本当に恐ろしいことになります。余計なお世話かもしれませんが、購入される場合は極力長期の分割は利用しない事。「月々◯万円くらいなら何とか返せるか」と気軽に考えているうちにローンを重ね月々の支払額が増えるのと同時に返済期間もどんどんと長くなります。安定収入があり、かつその範囲の中であれば何とかなりますが、ある日突然病気にかかってしまったり、何らかの事情で収入がなくなる又は激減してしまったら。
着物はご自身にとっての心の財産では有りますが、換金性は期待できません。持ち家のように万が一の時は売ればなんとかなるというものでは有りません。
ローンありきで商売されている呉服屋は皆さまの懐事情など気にかけてくれませんし必ず市場価格よりも高く販売されています。着物をご購入される際にはくれぐれも冷静にご判断下さい。

着物をローンで買ってはいけません。

暗い話題で失礼いたしました。
今日はここまで。 筑摩和之