【着物・帯】参考価格って難しい。。

2019/11/27

スポットガーデン 筑摩和之です

着物や帯 値段の妥当性ってプロでも判断するのは難しいものです。
私も20年ほどこの業界に身を置いていますが、着物屋ごとの価格差を自分の目で見たりお客様から情報を教えて頂いたり日々実感しています。

この価格差はどこからくるのでしょう?

それは呉服屋には様々な形態のお店があり、以下のような違いがあるからなんです。
「呉服屋によって必要とする利益率が大きく違う」
「商品入手ルートや仕入れ条件が全く違う」
「その商品が他社とどういう競合状況なのか」

洋服の場合はデパートやディスカウントストアー ファストファッション系など業態ごとに商品が住み分けされ またそれぞれ価格相場が存在します。少しでも安く購入したい場合はデパートや高級専門店に行きませんし 高くても高品質のものが欲しければディスカントストアーやファストファッション系の店には行かないでしょう。
高級インポートブランドなら定価が設定されており販売店も整理されています。
また商品の良し悪しはショップのネームバリューや製造メーカーを頼りに判断する事も出来ます。何より洋服は子供の頃から慣れ親しんでいて今まで沢山のお店を見て沢山の商品を手に取り日常的にお召しになりそして購入されています。ゆえに購入するときに価格の安さや高さを判断しやすいと言えます。

また馴染みのショップで購入される事も多いでしょう。

一方呉服はどうでしょうか?

第1に自分の行動範囲の中で呉服屋を選べるほど店舗数が無いのでは?
一握りの大都市であればで呉服屋がそこそこ有りますが、殆どのところは地元の商店街に1店舗あるかどうか 大型ショッピングモールにチェーン店が1店舗と言った感じでしょうか。また着物通販大手や着付け教室絡みの展示会など。

これでは1つのアイテムを比較することが出来ませんね。

「この着物や帯は他の呉服屋さんではいくらで販売されているのだろう?」
そう思っても全く分からない為 結局のところ呉服屋さんの言い値で購入せざるを得ないのでは?

現在ではネットやSNSが普及しネット検索すればある程度の価格は分かるのですが、色柄が全く同じで素材も同じでなければA店の着物とB店の着物が同じランクのものなのか そうではないのか一般の方では判断できません。私たちプロでも自分が実際に取り扱った事が無いものは判断できない場合が多いのですから。

それもネットに詳しい商品情報が記載されているというのが前提ですので漠然と抽象的にしか記載されていない商品の場合は尚更判断が難しくなります。

そういった事から「参考価格」として、その商品の相場価格はどれくらいなのかをお伝えしているのですが、定価が決まっていない呉服においてはその参考価格の幅が広すぎるのです。
(※元値表示は景品表示法で一定の基準がなければ出来ない為、厳密にいえば参考価格などという表示の仕方は禁止されています。(当店のように楽天やアマゾン ヤフーショッピングなどのモールに出店しておらず また小さなお店は公正取引委員会の目に留まることもないので こっそりと。。)

話を「参考価格の幅」に戻しますが、最初にご説明したように呉服屋の必要利益率が業態によって大きく異なり 更に仕入ルートや仕入条件の複雑さも加わり驚くほどの価格差になってしまうのです。

A呉服店で10万円の着物がB呉服店では50万なんて事は決して珍しく有りません。

こんな実話があります。
ある消費者さんが町の呉服屋さんで30万で購入した全く同じ帯がネット通販で38,000円で販売されていることを知り大クレームになりました。

これこそが必要利益率と仕入れルート及び条件の違いからくる最たる事例です。
少しだけ説明しますと。

30万で販売した呉服屋さんの商品の流れ。
メーカー原価25,000円の帯をメーカーが問屋へ50,000円(2倍)で貸し出し→問屋は50,000円で借りた品を100,000円(2倍)で呉服屋に貸し出し→100,000円で問屋から借りた品を呉服屋が300,000円(3倍)で販売したということです。

呉服業界における委託(借りる)条件取引では、この商品の流れと倍率は一般的な法則なのです。
「着物の価格は2×3=6」という過去のつぶやきがありますが問屋は仕入れ原価の2倍で呉服屋に貸し 呉服屋はこのまた3倍で販売するのです。更にこの事例のように問屋もメーカーに商品を借りていれば2×2×3=12とメーカー原価の12倍の価格になってしまいます。
この事例の場合は25,000円のメーカー製造原価の12倍 30万円の価格になったということです。

一方 買取取引であればメーカー原価は25,000円ですのでネット通販が38,000円で販売していたとしても決してあり得ないことではないのです(誰も儲かりませんが)

ではこの場合の参考価格は一体いくらなのか?
一般呉服店の参考価格300,000円
ネット安売り店の参考価格38,000円
実にこれだけの差が生まれ、どちらを採用するべきなのか悩むのです。
ですのでこういった場合には敢て参考価格を表示しないこともあります。

参考価格って一体。。ですね。。

また参考価格は私の仕入原価とリンクしているとは限らない場合があります。
商品によってはどこにでも出回らないものがあるのです。

例えば個人作家さんの商品などは生産数が少ない為 商品を経由する問屋さんが専門店を得意先とする1社ないしは2社のみという場合 その問屋さんと取引のないチェーン店や安売り通販 また街の呉服屋さんには商品が流れず 限られた専門店にしか商品が並びません。そして専門店はチェーン店や一般的な呉服屋ほど利益率は高くありません。

ですので仮に10万で仕入れたものを一般的な呉服屋が30万(値引きを前提とすればもっと高く)で価格設定するものを 専門店では20万ほどで販売しているといった具合です。(あくまでも一般的な価格です)

つまり一般的な呉服屋やチェーン店に流れないような品は同じ仕入原価でも参考価格は安くなるのです。
ややこしいですが解りますか?

これ以上詳しくお話すると色々と差し障りが有るのでこの辺りのご説明に留めておきますが、参考価格の設定には悩みます。

本当は参考価格など表示しない方が混乱せずに分かりやすいのかもしれませんが、安く売っているから他店で高く売っている品よりも低ランクの物なのだと誤解されてはお客様も私も得をしないので敢えて一般参考価格として そして少し控えめに表示させて頂いています。

またネット通販で安売りの材料にされているような品の場合は参考価格を表示しておりません。ネット検索で調査して一番安い価格とほぼ横並びになるように価格設定しています。


参考価格は適正価格とは違います。
適正価格とは維持継続して商品の供給と需要が続いていく価格です。
薄利で安く売り過ぎれば消費者にとっては嬉しいことですが、小売屋もメーカーも疲弊して倒産してしまいますし、必要以上の利益を取り過ぎて高い値段設定をすれば売れずに倒産してしまいます。

この呉服屋は他所よりも高い そう思える場合も その価格で売らなければ経営が成り立たないのであって、決して暴利を貪っているわけでは有りません。

呉服業界の給料ってメーカー・問屋・小売屋も本当に安いんです。

しかし、絶対的な消費者数の少なさと必需品ではないことによる購買頻度の低さ そしてお客様への「おもてなし」と称する(サービス)や広告に係る経費といった理由などにより仕方の無い事なのかもしれません。



着物を上手に購入するのは本当に難しいのです。
一度の失敗が取り返しのつかない程の高額ローンを抱えてしまうこともあります。
そうならない為にも価格の相場というものを「参考価格」として当店のサイトを通じてお伝えできればと考えています。

安心して着物や帯を購入する為に1番手っ取り早いのは信頼できるお店を見つけることなのですが。

今日はここまで

スポットガーデン 筑摩和之

 
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