着物の価格は何故高い?1
着物ってやはり高額ですよね。
例え私たち小売店が必要最低限の利益で販売しても。
以前、【着物の価格は難しい?】というシリーズで小売店の業態や流通経路によって同じ商品でも価格がマチマチだと言うお話しをしましまが、何故着物は洋服に比べてこんなに高いのかについて少し考えてみます。
1素材が高い
2一点作るのに時間がかかる
3流通経路が複雑
4絶対量が売れない(大量生産してコストダウンが出来ない)
5作り手がいなくなっている
6仕立てが高い
1素材が高い
着物の代表的な素材は絹ですね。着物には絹の中でも上質な生糸を使用します。
絹は天然繊維なので簡単に大量生産する事が出来ずにコストダウンが難しく、今では国内生産繭は全体の1%もありません。大半は中国からの輸入に頼っています。
着物1枚は約700グラムなのですが、一反の着尺には2600粒の繭が必要になります。なんだか気が遠くなるような数ですね。
白生地一反の値段はふせますが、それだけで結構な値段になってしまいます。
2一点作るのに時間がかかる
着物の値段を語る上で、手間暇が掛かる事は外せません。
染めには、手描き友禅、糸目友禅、型染、スクリーン捺染、機械染など有りますが やはり手描き友禅 糸目友禅や型染などは手作業なので月に染められる枚数は限定されますので高額になってしまいます。
例えば、沖縄の紅型染めなどは 六通の柄付けのもので月に2~3本しか染められません。職人さんは その2.3本を染める事で生計を立てなければならず、それだけでおおよその価格は予想できますよね。。
ですから、専業で生活費を稼ぐ事はとても難しんです。
紅型の着物になると、2ヶ月ほど掛かりますから染める職人さんも居ない状況です。
この素材の高価さと手間暇だけでも着物が高額になるのが納得していただけるのではないでしょうか。
ちょっと長くなりそうなので今日はここまで。
続きはまた。
着物の価格は何故高い?2
1では、素材の高価さと、紅型染めを例に挙げて手間暇が掛かるという観点からお話しました。
織物についても同じく一反の着物を織り上げるには時間が掛かります。
確かに機械織機であれば織るという工程だけを捉えれば早く出来上がりますが、糸づくりから糸の整経作業など全ての工程を考えると簡単では有りません。また機械織機であっても放ったらかしにしているわけでなく、人が付いて常にチェックしていなくてはなりません。
ましてや手織りなどとなると、ひと月に何反も出来るわけではないですね。
昔は農家の冬の仕事として紬を織っていました、いわゆる副業です。また、養蚕の盛んな地域では出荷する事が出来ないクズ糸で家庭用の衣服などを織ったりしていました。そしてその中で幾つかの産地は規模が大きくなり織物を主産業として発展していきました。
紬といえば昔は町に出荷する事が出来ないクズ繭で織られた農家の普段着だったんですね。
ただ現在は着物が普段着ではなくなり産地の生産量もどんどんと減って来ました。それに伴って普段着であった紬が希少性の高い高級品へと変わっていきました。
職人さんも後継者がいなく高齢化が進んで消え去りそうな伝承技術もあります。
後継者がなぜいないのか。
高度な技術が必要で厳しい仕事内容なのに収入が少ないからという理由があります。
大変な作業をするよりも、もっと収入を得られる仕事はたくさんありますから。
なので、織物だけで生計を立てている方よりも、パートタイムで主婦の方や高齢者の方が製造に携わっている場合が多いのが現状です。
ある小千谷紬の織子さんは、昼間は織物を夜は小料理屋さんを営んでおられました。
ちょっと話が逸れてしまいましたが、技術と根気を必要とする染織の業界が生き残っていくためには、やはりそれなりに高価になってしまうのは仕方のない事かもしれませんね。
一度消えた技術を復活させるのは並大抵のことではおありませんから何としてでも伝承させたいものです。
今日はここまで。
スポットガーデン店主 筑摩和之(ちくま かずゆき)