着物の価格は4倍違う

2017/05/03

こんな体験ありませんか?
 
自分が購入した着物や帯が他所のお店で安く売っていたこと。。

例えば、
ある産地の高級な着物を120万で購入。その着物は「上質な絹糸を熟練の技で丹精込めて手織りの技で織り上げられた逸品」
色やデザインは少し違えど同じように見えるものが違うお店で30万で売っていたらどう思いますか?
 
『同じように見えるけど全く違うものでは。。』
と思うかもしれません。
 
いえ、、そうとは限りません。
そこにはこんな実態があるのです。


以前のつぶやきでもお話した事がありますが、着物が製造元(メーカー)さんから店頭に並ぶまでの経路や小売店の販売形態でこんなに価格に差が出来てしまうという典型的な例をご説明します。


商品の流通には「買い取り商売」「委託商売」いう2つの手法が存在します。
 
買い取り商売とは最もシンプルな商売で、メーカーから問屋、小売店まで全て買い切り(不良品以外は返品しない)で取引することです。「そんなの当たり前では?」と思われるかもしれませんがそうではありません。商品を借りて販売し、売れたら代金を支払うという委託商売という取引もあります。決して珍しいことではなく、私も含めて多くの着物屋さんも利用しています。
でも、その取引方法と販売形態(販売手法)の違いで実に4倍もの価格差が付いてしまうんですね。場合によってはそれ以上の差が付くことも。。。


では具体的にお話しします。


●Aという商品があり、製造元(メーカー)原価は10万円という設定。
製造元→問屋→小売店と商品が流れるとします。


「買い取り商売」の場合
製造元→問屋へ14万前後販売→小売店へ18万前後販売→消費者へ30万前後で販売


「委託商売」の場合
製造元→問屋へ20万前後貸出→小売店へ40万前後貸出→消費者へ120万前後で販売


☆製造元原価が10万の同じ着物が最終的には30万と120万。実に4倍の差が付きました。
※これは私が考える最も一般的な代表例ですので当然全てがこうではありませんが、まあ近いものがあるはずです。


では、なぜ買い取りと委託でこんなに変わってしまうのでしょうか?そこにはこんな理由があります。
 
商売というのは掛かった経費を出来る限り早く回収して次の投資に回していきます。その回収の中で出来るだけ多くの利益を取ることが理想的ですが、高くては早く売れません。そこで売ったものが返ってこない買い取り商売の場合は多少利幅は少なくても売って現金化します。ところが委託商売の場合は最終的に消費者に売れる保証はなく、仮に10点貸し出した場合に3点売れれば御の字程度の成約率です。そうなると少しでも沢山の利益を出さなければ売れなかった7点分の経費を賄うことは出来ませんから当然貸出価格は高くなります。そして中間の問屋さんも同じように商品デリバリーの手間や物流費、小売店への販売応援などの経費などが掛かる為、貸出価格は買い取りよりも高くなります。また、問屋さんの立場からすれば、自社の在庫品を早くさばいて現金化したいのに委託のものが売れれば自社の在庫は減らずに新たに製造元に対する仕入(支払い)が発生するので利幅を多くとるという理由もあります。
 
このあたりの理由はもっと複雑な流通経路や取引条件、小売店の販売形態で変わりますので、あくまでもごく一般的なものです。

そして、価格に最も差が付く理由は小売店の売価設定によるところが大きいんです。
 
上の例でも分かるように、買い取りの場合には18万の仕入原価のものを30万で販売していますが、委託商売の場合には40万の委託原価のものを120万と3倍の価格で販売しています。
 
そこに販売形態が大きく関係しています。

お暇なときにでも、店主のつぶやきバックナンバーをご参照ください。

とまあこんな事から価格に4倍もの差が付いてしまうんです。。


もし、どこかのお店や販売会で着物や帯の購入を悩まれていたら私にご相談ください。嘘偽りなく正直にアドバイスさせていただきます。
 
※お問合せフォーム、Facebookメッセージなどなんでも結構です。


スポットガーデン ちくま かずゆき