博多産地の策略なのか?

2018/04/20


スポットガーデン 筑摩和之です
帯と言えば「博多織」まさに博多の粋といっていいですよねー☆
今年で生誕777年を迎える博多織。
皆さんもよくご存じの代表的な柄である「献上博多」のデザインからは凛とした佇まいを感じさせてくれるとともに、キュッキュッという絹鳴りが心地よく耳に入ってきます☆


下の写真で薄グリーンの柄が「華皿 はなざら」中央の薄ピンクの柄が「独鈷 どっこ」とよばれ、共に密教の儀式に使う道具をモチーフにしています。そして、グレーの縞柄は親子縞孝行縞とよばれるものです。
【親子縞】・・2本の細縞を少し太い縞が挟んでいます。細縞=子 太縞=親を表しており、子が小さい間は親が子を守るという意味が込められています。
【孝行縞】・・1本の太縞の左右に各2本の細縞が配されています。これは年老いた両親のどちらかが先立ち、一人になった片方を子が守るという意味が込められています。
うーん。。奥深いというか、何気なく配されている縞柄にもこんな思いが込められているのですね。


博多織 紗献上 八寸名古屋帯



という博多織の話はさておいて、今回のつぶやきは博多織求評会と呼ばれる新作発表会にまつわるお話でも。
この「博多織求評会」とは年に1度 11月に開催される新作発表会で、博多織の帯や着尺など実に200点もの作品が博多織発祥の地といわれる「勅賜 承天寺」に文字通り一堂に会します。そして、問屋や小売店の約120社ほどが一次審査員としてその中から数点を投票します。そして地元名士など15名が二次審査員として投票します。そこで各賞が決まり、その後一般公開と称して全ての方々がご覧頂けるようになります。
私もここ数年は参加していないのですが、以前勤めていた職場の時は毎年のように投票と仕入に行っていました。
今でもその時のパンフレット冊子が残っています。
博多織   

これは平成22年 第108回ですので8年前です。この時は博多織工業組合設立50周年記念と言うことで後日パンフレットが配布されました。写真右がその中で紹介されている1次審査員名簿ですが、左上の黒く塗りつぶしている箇所が私の会社です。「すごーい!審査員だなんて!」と思わないでくださいね。業者なら誰でも投票できますので(^-^;


その求評会の中で最高賞が「内閣総理大臣賞」ですので結構権威がありますね(今の内閣支持率は別にして。。)
この投票ですが、問屋・小売屋が1次審査をします。200点の中から選ぶわけですから全てをじっくり見るわけではありません。仕入れの合間に来て、サーっと見て目についた作品に投票します。(私は毎回サーっと見てサッと投票していましたのが、ひょっとすると他の人たちはしっかりと吟味していたかもしれません。。)
そこで、毎年のように、その時同行していた京都の問屋さんの仕入商品担当者さんから「筑摩さん、出来るだけ売りやすそうな価格のものに投票してくださいよ。」と言われていました。展示作品に色の付いた印でおおよその価格帯がわかるようにされていますので、数点投票するうちの1点は本当に目についたもの、そして他は値段が安くて売りやすそうなものに投票していました。
どういうことかと言えば、この求評会で受賞した作品は問屋さんにとっても商売チャンスなわけで、やはり小売屋向けにもよく売れるのです。ところが何十万もするような作品が受賞すると流石に小売屋も手を出しません。ましてや手織りの品となると量販出来ませんので商売上あまり美味しくないというわけです。

ここ数年は消費者の方もお買い求めになりやすい価格の作品が内閣総理大臣賞を受賞しています。確かに博多織ですので品質は確かですし、センスも良い品ばかりです。
でも200点もある中でこれが最高賞でいいの?という感じもします。
決してケチをつけているわけではありません。私も、第113回と昨年115回の内閣総理大臣賞作品を仕入れました。それは受賞というのは副産物のようなもので、帯そのものに魅力を感じたからです。
ただ。。見るからに高級感のある素晴らしい逸品と呼ぶにふさわしい作品もある中からこの価格帯の品が最高賞?というのが実はここ数年多いんです。一昨年は手織りの八寸名古屋帯でしたが、その前年やその前も確か値ごろの八寸名古屋帯でしたし、何故か夏の八寸名古屋帯なんです。
11月に賞が決まり、そこから追加の生産に入るのですから、小売店が1月~3月に約定を付けて4月頃に店頭に並ぶことを考えると夏物と言うのはジャストタイミングなんです。これが、袷用になると、実際に販売するのは秋からになりますので直ぐに次の求評会が行われて何となく前回の受賞作品となり旬を逃したような感じになってしまいます。こう考えると、機械織機の夏の値ごろ品が一番商売としては良いのです。手織りの品は量産出来ませんので、コツコツと販売して、ロングセラーになったりもしますが。
何か産地の策略めいたものを感じるのは私だけでしょうか。業界人でもまことしやかに囁かれている都市伝説なのです。信じるか信じ・・・・あっ・・


昨年の内閣総理大臣賞はこれ
博多織 内閣総理大臣賞 すずし

美しいキモノ春号 6Pに掲載
博多織 内閣総理大臣賞 すずし



内閣総理大臣賞であろうがなかろうが、良い商品は良い商品なのです☆
博多織、初めての方も既に何本もお持ちの方も是非お求め頂きたい一本です!
今日はここまで。

スポットガーデン ちくま かずゆき