【長さ】約510cm
作品名「金風」五行において金=秋にあたることから「秋の風」を意味します。
作品名を知ってから本作品を見ると、黄金に輝く穂を付けた田んぼの情景が目に浮かぶようです。これは私自身の主観によるものですから、人によっては色付き始めた銀杏を思い浮かべられるかもしれませんしもっと違った情景を連想される方もおられるでしょう。黄緑やオレンジといった色彩からイメージする湧き立つエネルギーや明るい希望のようにポジティブな感情が生まれてきませんか。そしてそのエネルギッシュカラーの中に白茶というシックな色をプラスする事で大人らしさを加えるとともに、様々なお色目のお着物とコーディネートし易くさせているのは流石としか言いようが有りません。
本作品は秋の風を意味するタイトルではありますが、日本の四季における色のイメージを主観的に表現されたものであり、決して秋に締める帯という意味ではございません。秋・冬・春 どの季節においてもこのエネルギッシュな色使いは、明るい印象の着姿を演出し、お召しになる方はもちろん見る者をも元気にしてくれるに違いありません。
多種類の草木染料で染色された絣糸が放つ色の美しさは何とも言えない趣きとともに目に優しく映ります。この曖昧な表現でしか現わすことが出来ないのが草木染であり、色の奥に目で識別が出来ない別の色が重なっているとでも言いましょうか。曖昧な揺らぎといったものが草木染の魅力ではないでしょうか。
綾織の技法で生み出された表面の変化が動きのある豊かな表情を漂わせ、この天然の美しさを更に増幅させるのです。
緯糸を多く表に浮かせた部分と縦糸を多く表に浮かせる部分とに織分けることで縦方向に縞の地模様が生まれるとともに緯糸と縦糸のどちらが多く表に現れるかで色を変化させています。そして綾織で製織された織物は、表面はシャリっとしたざらつきが有り、ふっくらとした弾力のある風合いに仕上がります。
絣の技術を用いた絣糸を経糸に配する事で横段模様が表現されています。すーっと暈しのように縦方向に伸びる絣足が伝統工芸品としての味わいと風格を感じさせてくれます。
自然現象やイメージを織で表現したい。
そうおっしゃる谷田部郁子さん。「やりたいと思ったことは精一杯やる。」織の確かさや作り出す図案への人一倍強い思いを持たれ、数々の受賞歴を誇る国画会準会員の染織作家さんです。
谷田部郁子(やたべ いくこ)
岩手県 二戸に生まれ、高校まで自然の中で生活している間は山の向こう側の広い世界へ思いを馳せられたそうです。
そして東海大学教養学部デザイン学科に進学 卒業後約2年間 会社勤めをされ、その後 染織りの世界に足を踏み入れられました。
川島テキスタイルスクールや染織作家 小島秀子さんに教えを請いながら技術を極められ、展覧会において数々の受賞歴を誇り「国画会準会員」に推挙されたのです。
都会で生活している中で故郷を懐かしく思っていた中、ご家庭の事情で生まれ故郷の岩手県 二戸に移り住み自宅を改築し工房設立。そして現在もご活躍され続けています。
子供の頃は都会に憧れたものの年を重ね田舎の故郷に帰るとそれまで感じる事がなかった自然の魅力を感じるようになられたそうです。
草木染により染め上げられたエネルギッシュなカラーリングに大人っぽさを添えた白茶色。綾織のふんわりをした生地の風合い、絣の風格や味わい。これぞ工芸染織と言える素晴らしい作品。非常に希少な谷田部郁子さんの作品が着姿を美しく彩ります。
問屋さんにおいても滅多に入荷しないお品となりますので、私自身も見つけると即仕入れしています。
お目に留まりましたら是非お手元にお迎えいただきましたら幸いです。自信を持っておススメ致します。
スポットガーデン 筑摩和之
本品は帯地全体に柄のある全通帯です。
垂れ先からお太鼓の裏部分は下の写真のようにシンプルな横段になっています。
※写真と実物とはモニターや画像処理の関係上、若干異なる場合がございますので予めご理解ください。