【長さ】約cm
自然現象やイメージを織で表現したい。
そうおっしゃる谷田部郁子さん。「やりたいと思ったことは精一杯やる。」織の確かさや作り出す図案への人一倍強い思いを持たれ、数々の受賞歴を誇る国画会準会員の染織作家さんです。
木々の間から差し込む日差しをイメージされた本作品「こもれ日」~なるほど・・と思わず息を飲んで見入ってしまうほどの優しさ。ブルーと黄緑が森林の緑と隙間から覗く青空の入り混じったファジーな色彩を感じさせ、白く抜かれた絣模様を見ていると、キラキラと輝く日差しが目に浮かぶようです。谷田部さんがそう解説されている訳では有りませんのでその解釈は間違っているかもしれませんが、私にはそう見えるのです。皆さんもそれぞれ感じ方は異なると思いますが「美しい」という表現は共通しているのでは無いでしょうか。とにかく見て触れてその良さを感じる。そんな素晴らしい作品です。
自然の色は自然の染料で。
菊と玉ねぎの皮を使って染め上げられた紬糸の柔らかく優しい色合いが、本品をより一層魅力的なものに仕上げています。
化学染料も併用されていますが、草木染の曖昧さが絶対的な色ではなく目に見える色の向こう側に別の色が見え隠れするようで、それを人は深みや味わいと表現するのでしょう。
細かな市松の地模様が立体的な揺らぎ生み出し、ずっと見つめていると、ゆらゆらと揺れる木々の葉がまぶたに浮かび、風の音が聴こえマイナスイオンを浴びているかのような心地良さが体全体に染み渡って行きます。
そして、この布に触れた時のなんとも言えない温かみや安らぎ。そしてふんわりしているのにしっかりとした頼りがいを感じ、それこそが真綿の風合いを損ねずに織り進められる手織りだけが成せる技なのです。布の声に耳を傾けながら”トントン” ”トントン”と、時に優しく時に力強く、職人の感性と経験というリズムを刻みながら織り上げられていきます。
市松の地模様を拡大して見ると、タテ糸2本に対してヨコ糸を通した部分と、1本づつ交互にヨコ糸を通した部分があるのがわかると思います。この密度の違いと表面に浮くヨコ糸の面積の違いによって、立体的な市松模様に織り上がるとともに、光の反射が異なり光沢の変化が現れます。確かな織の技術があってこそ可能な細密な手仕事なのです。
白く染め抜かれた絣模様がキラキラと輝く木漏れ日のようです。そして白い絣足(色が変わる掠れ部分)が、洗練された現代的な雰囲気の中に伝統的な素朴さを添えて唯一無二の美しさを漂わせます。
谷田部郁子(やたべ いくこ)さん。
岩手県 二戸に生まれ、高校まで自然の中で生活している間は山の向こう側の広い世界へ思いを馳せられたそうです。
そして東海大学教養学部デザイン学科に進学 卒業後約2年間 会社勤めをされ、その後 染織りの世界に足を踏み入れられました。
川島テキスタイルスクールや染織作家 小島秀子さんに教えを請いながら技術を極められました。
展覧会において数々の受賞歴を持ち、国画会準会員に推挙されたのです。
都会で生活している中で故郷を懐かしく思っていた中、ご家庭の事情で生まれ故郷の岩手県 二戸に移り住み自宅を改築し工房設立。そして現在もご活躍され続けています。
子供の頃は都会に憧れたものの年を重ね田舎の故郷に帰るとそれまで感じる事がなかった自然の魅力を感じるようになられたそうです。
人気雑誌「美しいキモノ」にも作品がたびたび登場し、2017年春号では特集記事が組まれています。※呉服専門店さんの工房レポートです。
自然の情景を谷田部さんならではの目線で表現されて出来上がった作品の数々は全国の着物愛好家や専門店から人気を博し、我々小売屋も入手が困難なほどです。
今回、京都の問屋さんの決算という事で、無理を言って分けていただきました。本来ですとこの価格でご提供するのは厳しいのですが、特別に実現致しました。お値段はもとよりこのお品そのものに惚れ込み手元に頂いた次第でございます。
※写真と実物とはモニターや画像処理の関係上、若干異なる場合がございますので予めご理解ください。