伊勢型
重要無形文化財
彫師×染師 神業の競演
作品名 福縞
福に身を包まれて
結城紬地
特別価格
【型紙】伊勢型 国の重要無形文化財
【染元】染処古今(所在地:京都)
【染師】野村秀夫
【品質】絹100%:結城紬
【生地幅】約38.5cm(裄丈約71cm 1尺8寸8分まで対応)
【着用時期】10月頃から翌年5月頃(袷の季節)6月 9月(単衣の季節)
神業とも言える彫師の手仕事、研ぎ澄まされた染師の感性が融合する事によって完成される伊勢型小紋。
連なる線が奏でる旋律の様な型紙の美しさ、染め上がった布が放つ煌めき。それらは卓越した職人技によって生み出されるのです。
本品は結城紬に、国の重要無形文化財指定技術 伊勢型紙を用い、伊勢型専門染工房「染処古今(そめどころここん)」の一級技能士 野村秀夫氏によって染め上げられました。
優しさとシックさを漂わせるグレイッシュなオリーブの色目が大人の落ち着きを演出します。
源氏香のようにも見えるお柄は、よく見ると「福」の文字があしらわれています。
主張せず静かに見守るかのようでもあり、心が癒されるのではないでしょうか。
そして、染地に用いられた結城紬のふっくらとした素朴な温もりに身を包まれれば至福の贅沢感を味わっていただけるに違いありません。
縞彫り
近づいて柄を見ると、縞彫りの技法で彫られた型紙で染められているのがわかります。
縦縞を利用して表現された福の文字と松葉のお柄は直線の組み合わせにも関わらず、柔らかく優しい雰囲気なのが何とも不思議ですね。
下の画像を見ると、ごく細い縞柄の間に福と松葉の柄をかたどる線が染め抜かれているのが分かります。この型紙を彫る事がいかに難しく、また柄がズレないように糊を置き染め上げる為にはどれだけ高度な技術が必要なのか想像するだけでも溜息が出てしまうのです。
【伊勢型紙】
楮だけですいた美濃和紙に接着剤として柿渋の液を塗り、数枚貼り合わせたものが地紙(型紙の元)になります。
彫刻刀や小刀のような専用の道具を用いて地紙を彫り柄を作っていきます。
※錐彫り、突彫り、道具彫り、縞彫りなど彫り方によって刃先の形状が異なり、細かな柄になればなるほど卓越した技術が必要である事は言うまでも有りません。
錐(きり)彫り・・もっとも古くからある彫り技法、半円形の刃先の小刀を用い、丸い小さな穴を無数に開けてあらゆる文様を作り出します。小紋三役と呼ばれる鮫、通し、行儀といった文様は錐彫りの技法で彫られます。
突彫り・・友禅などやや大柄の文様を彫るのに適しています。細長い三日月型の小刀を使います。傾斜の付いた机の上に地紙を数枚重ねて穴板の上に置き、垂直に突く様にして小刀を彫り進めます。
道具彫り・・小刀の先が花、扇、菱などの形に作られているものを突いて彫り抜く技法。錐彫りとともに小紋用に最もよく用いられます。
縞彫り・・毛髪の様に微細な筋を何百本も彫って極細の縞柄を作る技法。
型紙は一度に数枚重ねて彫られます。出来上がった型紙は一定数染めると劣化して使えなくなるそうです。ゆえに型紙がすべて寿命を迎えた時その柄は終了となるのです。いずれは型紙が役目を終えて消え去ってしまうという有限さに、儚さやノスタルジックな感情が湧き出るのです。
【伊勢型紙で染める】
板に貼られた白生地に型紙を置き防染糊を引いていきます。型に開いた隙間を通して生地に防染糊が付く事でその部分に色が染まらないようにします。
型紙を順番に送りながら糊を置いて行く作業は、染め上がった際に型紙の継ぎ目が分からないよう寸分の狂いも許されません。この工程が染め上がりの良し悪しに直結してしまう為、正に神業とも言える糊置きの技術が必要なのです。
【伊勢型の歴史】
三重県鈴鹿市白子町、寺家町を産地とする伊勢型紙。
応仁の乱によって京都から逃げ延びてきた人々の中に型紙職人がいた事から伊勢型紙の産地となったと伝えられていますが、その歴史は定かではありません。
また、鈴鹿市にある子安観音寺には、今から1200年ほど昔 久大夫という翁が不断桜の落ち葉の虫食い跡がとても面白く、紙を切り抜き模様に仕立てる事を思いついたことが伊勢型紙の発祥という言い伝えも残っています。
その伊勢型紙を江戸を中心とした染屋が購入し、染師らの手によって染め物が生産されていました。江戸時代には武士の礼服である裃の模様として定められるようになり、武士達は競うようにより細かく高度な柄を求め伊勢型の技術が向上し発展して行きます。将軍や大名などは決まった模様が決められ、他のものがその柄を使用できないよう「留柄」「定め柄」とされていました。
その後江戸の町人らにも広がり、奢侈(ししゃ)禁止令(贅沢を禁止し倹約を推奨する命令)が出される中、遠目には地味に見える小さな柄の中に遊び心を取り入れた粋で洒落た柄を求め男女ともに流行していったのです。
その後、伊勢型で染められたものが江戸小紋と呼ばれるようになりました。
昭和30年 第1回 人間国宝 国の重要無形文化財技術保持者に、突彫りの南部芳松氏、道具彫りの中村勇二郎氏、錐(きり)彫りの初代 六谷梅軒氏が認定されました。
本品に用いられている型紙の製作者については明らかにされておりません。染処古今さんに理由をお聞きしたところ、縞彫りの型紙については特定の彫師のもの以外は名前を表に出されていないとの事。その理由について詳しくは分かりませんが、「産地の不思議な慣例」とだけ教えて頂きました。
下は染処古今さんの染め工程ですが、本品については「引染」は行っておりません。蒸しの後、水洗い・乾燥・湯のしの工程になります。
「作品名:福縞」国の重要無形文化財指定技術 伊勢型紙を用いて、伊勢型専門染工房 染処古今の染師 野村秀夫氏が染め上げました。
野村秀夫・・・京都に工房を構える伊勢型専門染工房 染処古今の染師 その道50年を超える一級技能士で、伊勢型染の歴史を継承されてきましたが 2022年12月をもって引退されました。
下の画像は染処古今さんのホームページから転用
結城紬
染地には結城紬の白生地が用いられています。手紡ぎされた真綿糸のランダムな節の素朴な工芸味とほっこりとした温もりがお楽しみしただけます。
本品の結城紬は機械織機で製織されていますが、しっかりとした生産管理によって、真綿糸のふっくらとした風合いを損なわず結城紬の魅力を余す所なく引き出しています。
伊勢型染特有の色糊りシゴキ染で染織されていますので、裏に色が通らず生成りの無地になっており単衣仕立てにされてもお洒落です。
結城紬は温かみのある生地ですので、単衣仕立てにされる場合は真夏前後の暑さ対策用の単衣ではなく、10月頃から翌年の4月頃でも単衣で過ごしたいという方がお召しになるのに適しています。
彫師と染師の神業が共演して生まれる伊勢型小紋。結城紬生地に染め上げられた貴重なお品です。ふっくらとした温もりと見事な染技に魅了され、粋なデザインに幸福感が湧き出るに違いありません。真摯なモノづくりをされる染処古今さんの手によって命が吹き込まれた名品を是非お手元にお迎え下さい。
スポットガーデン 筑摩和之
※写真と実物ではモニター環境などによって若干色が違って見えることがございます。
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