【長さ】約500cm
自然の恵みから頂いた植物繊維に人の手で命を吹き込み織り上げられた葛布 八寸名古屋帯。
ログウッドで染められた白銀色が放つ揺らぎの魅力と所々ほんのり茶色味が浮かび上がる優しさ、そして葛糸の繋ぎ目が工芸品らしい風格を漂わせます。
薄手で軽く適度な張りのある風合いは単衣、夏の装いから袷の季節まで一年を通じてオールシーズンお使いいただけます。実際に葛布の帯を使われている方は1年通じてタンスに直す時が無いほどに重宝しているというほどです。
6,000年の時を超えて人の心を揺さぶり続ける自然布「葛布」古代より人間の衣服や身の回りの生活を支えてきたのは葛であり麻であり又 藤やシナと言った植物でした 植物を採取し皮を剥ぎ糸を作り手織りで布に仕上げる。その全ての工程を手仕事によって行われたものを自然布と呼びます。産業の発達 や生活様式の変化により、自然布は手間暇がかかる事から衰退し非常に希少で高価な物になってしまいました。庶民の生活に密着していた布が今では手の届きにくいものになってしまったのです。それでも人は自然布に魅かれ手に取った時の心地良さに酔いしれてしまうのです。
葛という植物は珍しいものでは有りません 春に芽を出し凄い繁殖力で夏に向けて蔓を伸ばします。全国的に生殖していますので皆さんも夏になると必ずと言って良いほど目にされると思います。道路脇の斜面などに葉を付けて生えているあれです。また秋には藤に似た赤い花を咲かせ秋の七草としても有名です。根っこは葛粉や葛根湯などになります。
この葛を採取し蔓の中から繊維を取り出し糸にして手織りされたのが葛布です。
自然布には藤布やしな布 また芭蕉布などが有名ですが それらは縦糸 緯糸共にその糸を用いられていますが、葛布は緯糸に葛糸をそして縦糸には絹や麻 木綿など他の天然繊維から作られた糸を用いるのが一般的です。(※本品の経糸は赤城座繰された絹糸が用いられています)
植物繊維のパリッとした風合いなのですが皺の回復力に優れるとともに、縦糸に用いられた絹糸によりしなやかさも兼ね備えています。
葛糸そのものは非常に軽く強靭でかつ速乾性があるため昔は武士の鎧下にも用いられ 防水性にも優れていることから道中合羽としても利用されていました。
また貴族の喪服や装束としても使用されており 現在でも蹴鞠行事の蹴鞠袴として使用されています。
弾力性があり皺の回復力に優れ、かつ絹糸のしなやかさを兼ね備えた唯一無二の風合いをお楽しみ下さい。
葛布の特徴の1つは無撚糸である事があげられます。通常糸は撚り(回転)が掛けられますが葛布は平坦な平糸のまま手織りによって緯糸に打ち込まれます。この糸が平坦であることが艶やかな光沢を生み出すのです
そして 葛布が他の自然布と異なる特徴が 糸を結んで繋いでいくことです。他産地の自然布は結び目が出来ないように撚りによって糸を繋いでいきます。よって葛布には結び目による節が生地の表面に所々現れてそれが変化のある表情をかもし出すのです。
工程の中では皮を剥ぐ前に茹でた蔓をススキで作った室で発酵させることが他産地とは異なります。発酵させることで細菌が皮を食べ 水の中で皮を綺麗に剥ぐことが出来ます。そして繊維を適度な太さに手で裂いていき 結び繋いで糸が完成します。
手織りで製織した最後に砧打ちにより繊維を柔らかくして仕上げられます。
無撚糸ゆえの光沢と、部分的に染まっていない天然の葛の色が所々に残っており、手作りの魅力が詰まった織物に仕上げられています。
※糸を繋ぐときの結び目が所々現れています。
葛布の歴史
約6,300年昔 紀元前4,300年頃に中国の遺跡から見つかったものがアジア最古の葛布だと言われています。日本のおいても古墳時代の頃には既に製織されていた形跡が出土品の中から見つかっています。
戦国時代から江戸時代まで 貴族の装束や武士の裃など様々な用途に使用されてきた葛布ですが 明治に入り 武士階級の消滅や貴族の洋装化により急激に需要が縮小してしまいました。ところが江戸時代から表装としても用いられていたことから襖地(ふすまじ)の製造にシフトしていくとともに葛布を染色し紙を裏打ちして壁紙として欧米へ輸出されるようになりました。「グラスクロス」として非常に人気を博し明治43年には年間12,600反(一反=36インチ8ヤード)の生産を記録したほどです。静岡県を中心に生産されていた葛布は 掛川周辺で原料を採取していましたが それでは追い付かずに栃木県や茨城県、福島県など各地で原料を作るようになりました。大正の中頃には朝鮮半島に出向いて葛苧(くずお=糸の前段階の繊維の状態)の作り方を教えて仕入れる業者も現れました。日中戦争や太平洋戦争により衰退するとともに 朝鮮からの葛苧の輸入も途絶えていましたが 静岡県、栃木県 茨城県 岐阜県などに葛苧の生産を委託し壁紙の生産が復活されました。
昭和27,8年頃にはアメリカでの人気が高まり韓国から葛苧の輸入が始まり最盛期には9割の葛苧が輸入に頼るものでした。
しかし韓国では昭和36年の政権交代をきっかけに自国の葛布産業に目を付けた韓国政府が原料の輸出を禁止したために日本国内の葛布産業は大打撃を受けたのです。
それまで葛布業者40軒 績み手7000人 織り手1000人 年間45万反 売上6億円という盛隆を極めていた産業が 昭和59年には業者が5軒となってしまい 現在では静岡県において実質3軒の業者しか残っていません。
色紙掛けやハンドバックなどを手掛ける川出幸吉商店 カーテンの輸出 バッグ 暖簾などの製作販売をされる小崎葛布工芸 そして本品の製造元であり 和装品の製造中心の大井川葛布 この3社のみとなっています。
6,000年の時を超えて今なお人々から愛される古代の自然布「葛布」経糸には赤城座繰絹糸を配された軽くて強く そして適度な張りのある風合いがオールシーズンのご着用を可能とします。白銀色の濃淡と糸繋ぎの結び目が何とも言えない表情をかもし出し 様々な色柄のお着物と自在にコーディネートしてお楽しみいただけ 粋なお洒落さを漂わせます。
手仕事の技が天然の趣きを余すところなく伝え 正に贅沢の極みと言っても過言ではない希少な工芸品です。
※経糸は赤城座繰の絹糸が用いられています。
長きにわたり人々の心を掴んで離さない自然布「葛布」
手仕事が生み出す温もりと歴史の深みが詰まった織物に心癒されませんか。
大井川葛布さんでは今まで九寸名古屋帯を製作しておられたのですが、天然の魅力をより引き出す八寸名古屋帯をオーダーさせて頂きました。そこで経糸の太さなど試行錯誤をしていただき大井川葛布さんとしては初の八寸名古屋帯が完成いたしました。
九寸名古屋帯とは異なり帯芯を入れずにお仕立てしますのでダイレクトに布の風合いをお楽しみいただけるとともに、軽くストレスのない締め心地をご堪能下さい。
天然素材ゆえに季節を問わずオールシーズンお使いいただけます。また白銀の無地はお着物の色や柄を選ばず自在にコーディネートしていただけますので、お手持ちの紬や上布、木綿など様々な素材のお着物と組み合わせて着物通の装いをお楽しみ下さい。
スポットガーデン 筑摩和之
※価格にお仕立て代は含まれておりません。
※お仕立てをご依頼の場合には、本ページ内に設置のオプションからそれぞれの項目をお選びください。
【お仕立てについて】
【八寸名古屋帯】
1「松葉仕立て」
1,620円
手先から約38cm(1尺)半分に折ってかがります。
※最も一般的なお仕立て方法です。
※手先が半分になっているので締めやすくなっています。
2「平仕立て(開き仕立て)」
1,620円
手先を半分に折らずに全て平らのまま仕立てます。
※胴巻部分の帯巾を調節したい方におすすめです。
【ガード加工】※水をはじく加工です。
3,240円
※国内ミシン仕立てです。
※手縫いプラス料金・・別途3,240円(オプションより選択)
※お仕立て期間 約20日