【長さ】約530cm
一目で笑顔が溢れ出す そんなほのぼのとした世界観が染織作家 関美穂子さんの魅力です。道端に咲く可愛らしい花達が まるで命を宿らせているかのように生き生きと表現されています。ダンスをしながら歌っているような こちらに話しかけてきているような そんなメルヘンちっくな世界が帯という空間の中に広がっていますね。
大胆すぎるとも思える構図と色使いなのに全くうるささを感じさせず 見事に調和して安らぎを与えてくれる。
20代という若き頃 2006年 2007年と二年連続「国展」に入選されたセンスと技術は流石という他ありません。
節がランダムに現れる独特の趣きのある紬生地が用いられ 陽だまりの温もりを感じさせる素朴な趣を漂わせます。
地色は生地白ではなく ほんのりアイボリーに引き染めされています。
経糸 緯糸に配された真綿紬糸の節がランダムに現れて素朴な趣深さを漂わせ ふっくらとした温もりのある帯地に染め上げられています。
この作品を見て「可愛くて素敵だけど若向きすぎて 私にはちょっと。。」と躊躇される貴女 若過ぎでますか?・・いいえ☆彡 全ての年代の方にお召しいただきたい帯なんです。
確かに洋服や着物に置き換えると派手 そう感じるかもしれません。しかし この作品の色をよく見て下さい。オレンジと山吹色が印象的なのですが、その他の色使いを見るとブルーグレーやグレー 渋みのグリーン 茄子紺 茶色などグッと抑えた渋さがあります。そして垂れ先を無地に仕立てると深みのある青緑が着物姿を引き締め大人っぽさを醸し出すのです。
幾つになっても着物女子 こんな大人の可愛さ溢れる関美穂子さんの帯を締めれば気分も”あげあげ”になるのでは?☆彡。。”あげあげ”って古い表現ですかね。。
型絵染
皆さんは「型絵染(かたえぞめ)」というジャンルをご存知ですか?
本作品を見て「紅型染?」と思われた方も多いのではないでしょうか。型絵染とは人間国宝 芹沢けい介氏(けい=金偏に圭 1895年-1984年)が沖縄の染物「紅型染」に魅せられ そして紅型染を参考にし 自らが考案し確立させた型染めです。
1人の作家さんが図案から型紙彫り 染色に至るまで一人で作品を作り上げます。彩色には紅型染同様「顔料」が用いられ友禅染とは明らかに一線を画する力強さが特徴的です。顔料は生地に浸透させるのではなく 生地の上に色素をのせることで染まります。鉱物性の性質ですので水に溶けずダイレクトに響く色が感じられるのです。
また、紅型染の場合は”隈取り”と呼ばれる重ね染めが施されるのが特徴です。
型絵染が紅型や江戸小紋といった他の型染めと異なるのがその自由な発想で生み出されるデザインの面白さです。
紅型染めも現在では若手作家さん中心に独自性のある柄を製作されるようになりましたが、基本は古典柄や沖縄の生活の中にある道具や自然の情景のデザインです。江戸小紋も鮫小紋や角通し 万筋他 様々な柄がありますが伝統的な柄が中心です。一方 型絵染には図案の縛りなど一切なく あくまでも作家さんの感性が自由なデザインを生み出し それぞれの個性が作品に色濃く表れて 好きな方なら誰の作品なのか一目瞭然といっていいでしょう。
民藝運動の父と謳われる柳宗悦氏を師と仰ぎ 染織の道を進んでいかれた芹沢けい介氏によって確立された型絵染は一つのジャンルとして国に認められ 1956年(昭和31年)国の重要無形文化財に指定され同氏は人間国宝に認定されました。自由な発想で作品を生み出していく独創性は後進に脈々と受け継がれ 現在においても着物愛好家に絶大な人気を博しています。
水に溶けない性質の顔料を用いる事で色の上から別の色を載せる事が可能となりメリハリのある力強さが生まれます。(染料の場合は水溶性の為 色と色が混ざり合ってしまいます。はんなりとした優しい色彩感は染料が適しているのではないでしょうか)
関 美穂子
1980年 神奈川県生まれ
2000年から 型染の染織家"堀江茉莉"氏に師事
2006年,2007年 国展入選
現在 京都在住
帯の製作はもとより 手拭いや便箋 封筒といった文具雑貨などのデザインも手掛けるなど非常に高い人気を博しています。