【製作者】志村ふくみ 国の重要無形文化財技術保持者 人間国宝
【染色】草木染:藍 玉葱 刈安 春草
【製織】手織り
【着用時期】9月から翌年6月頃 袷 単衣の季節
【長さ】仕立て上がり370cmにさせて頂きます。
※長尺で製作されていますので400cm以上も可能です。
※ご希望の長さがございましたらご注文手続きの際に、フリー記入欄からお知らせください。
今年で白寿を迎えられた志村ふくみさん。これほどまでに色を愛し色に愛された者が居るのだろうか。様々な草木を用いて染め上げられた絹糸が奏でる旋律が布という楽譜に息吹を宿すのです。
静かに時を刻むように打ち込まれる機音が心地良く胸に響くように貴女を優しく包み込みます。志村ふくみさんが作り上げる布という物語を是非お楽しみ下さい。
まさか彼女の品を手にする時が来るとは夢にも思いませんでした。今回ご縁を頂き本品「草」と題された名古屋帯をご提供させていただくことが叶いました。
来年で100歳を迎えられる志村さんが手掛けられた作品が何かを語りかけてくるかのように感じるのは決して気のせいではないでしょう。それほどまでに布に宿った想いが存在感を放ち、約70年に渡り織物と語らいながら生きてこられ、自然と一体になった深みがここにあるのです。
色を愛し色に愛され
染織の仕事は地球を司る3つの要素から成るという。
動物(繭) 植物(草木染) 鉱物(色を繋ぎ合わせる媒染)
地球という星が与えてくれる生命の本質に触れ合い織物に美と活力を生み出すのです。
草木染料で染色された糸が放つ色の美しさは何とも言えない趣きとともに目に優しく映ります。深みや味わいといった曖昧な表現でしか現わすことが出来ないのが草木染であり、目に映る色の奥に識別が出来ない別の色が重なっているとでも言いましょうか。何度も何度も草木染料に浸け込み重ね染めするがゆえに生まれる曖昧な揺らぎといっていいのかもしれません。
その魅力を的確に形容する言葉が存在しない為、私たちは「深み」や「味わい」と表現するほかないのです。
裂織が感じさせる歴史の深み
部分的に太く存在感のある緯糸が打ち込まれていますが、これは織上がった生地を裂いて緯糸として織り込まれたものです。恐らく以前に製作された作品の残裂だと思われますが、立体的な表面変化が重厚感と豊かな表情を漂わせると同時に、長きにわたって積み上げられてきた志村ふくみさんの歴史を目に見える形で宿らせたかのような重みが感じられるのです。
下の画像・・中央ブルーの生地を裂いた裂れが織り込まれています。
下の画像・・中央アイボリーの生地を裂いた裂れが織り込まれています。
太い緯糸の全てが裂織ではなく、何本か引き揃えた糸も打ち込まれています。
手織りの魅力
「とんとん♪ とんととん♪」ただひたすら機に向かい緯糸を打ち込んでいく。布の声を聞きながら糸を労わるように、しかし力強く織り進める手織りの作業は、常に心を乱す事が許されない正確さが求められます。それは自分自身と向かい合い我を見つめ直すかのような作業であり、集中力と根気強さを必要とします。高度な技術と人の感度によって、糸の状態や湿度などを見極めて打ち込み具合を加減する。機械織りでは感じられない優しさは人の手がもたらす温もりであり、体に沿う締め心地の良さが手織り最大の魅力なのです。
志村ふくみ
・染織家 随筆家
・国の重要無形文化財指定技術保持者(人間国宝)
・文化功労者
・文化勲章受章
1924年 大正13年 滋賀県近江八幡市に生まれ、2歳で父の実弟の養女となったのち、17歳の時に叔父叔母だと思っていた二人が実の両親だと知るとともに、母 小野豊さんの影響で芸術の世界に導かれ、初めて母から機織りを習った事が後年織物の道に進む発端となったそうです。そして、民芸運動の祖、柳宗悦(やなぎ むねよし)の上賀茂芸術協団に実母が参画していた影響で日本民藝館に通い沖縄の織物に傾倒していかれました。
25歳で結婚、長女洋子さん 次女順子さんを出産された後、若くして亡くなった兄の遺画集を制作するため、30歳の時 近江八幡に滞在し「兄のこと」という文章を書かれている際、実のご両親と昵懇(じっこん)であった柳宗悦氏と縁があり画集編纂の指導を受け織物の道を進められました。同氏著の「工芸の道」を読み深く感動し、染織の世界へ足を踏み入れることを決断されました。
31歳で離婚。二人の娘を養父母にあずけたふくみさんは、近江八幡の実家に移り住み、実母 小野豊さんの指導を受けながら草木染と紬糸による織物を始め本格的に染織に打ち込まれるようになったのです。
そして、師事していた木漆工芸家 黒田辰秋の推薦により、33歳で第四回日本伝統工芸展において「方形紋綴帯」で初入選。その後 宮本憲吉氏 、稲垣稔次郎氏、細川護立氏らに師事し、39歳に至る6年間に渡り日本伝統工芸展に出品し毎年のように賞を受賞されました。
柳宗悦に影響され民芸作家として活動していた志村ふくみさんも、この頃から民芸の作風を離れ新しい工芸精神を認識されるようになったそうです。
その後、製作を続けながら数限りないほどの個展・作品展を開催するとともに、44歳から10年間 日本伝統工芸展審査員を務められました。
染織に対する功績や技術力などが認められ、66歳で人間国宝に認定。同年に長女洋子さんと染織研究所「都機工房」を立ち上げられました。
その後も染織の研究及び作品製作、個展にと活躍を続けられ、後進の指導も精力的に行いお弟子さんを染織作家として世に送り出されています。
彼女を崇拝する作家さんや作品を手にすることを夢見る多くの愛好家が居られ、今や伝説的な存在と言っても過言ではないほどに染織界に影響を与えているのです。
本品には志村ふくみさんの作品であることを証明する工房発行の証紙が付いてございますが、肉体的に全てをご本人がこなすことは難しと考えられますので、実際にはどこまでの工程をなさっているかは定かではありません。しかし志村ふくみさんの意志が込められた作品であり、「志村ふくみさんの作品だ」と自信をもってお召しくださいと、お墨付きを与えられた作品に間違いございません。
2023年 10月3日発行の証明書ですので、この記事を書いている10月末時点においては志村ふくみさん最新の作品ではないでしょうか。
2023年10月製作 作品名「草」
染織界の至宝 志村ふくみさんが生み出す温もりの布。どんな形容詞を並べても薄っぺらで霞んでしまうほどの素晴らしさ。言葉で語るよりも直に手に触れて感じていただきたいと切に思います。
御年99才でなお現役を貫き全うされる姿に感服するほかありません。
これ以上ない贅沢を味わってみてはいかがでしょうか。
スポットガーデン 筑摩和之
【お仕立てについて】
【九寸名古屋帯】
1「名古屋帯仕立て」5,400円
手先からお太鼓までを半分に折って芯を入れて仕立てる
※最も一般的なお仕立て方法です。
2「開き仕立て(裏地無し)」9,720円
手先を半分に折らずに全て平らにして芯を入れて仕立て、手先から胴巻きの部分に裏地をつけない
3「開き仕立て(裏地付き)」12,420円
2の開き仕立てで裏地(モス)をつける仕立て
※裏地の色はお任せになります。
【ガード加工】・・・3,240円
※撥水加工 雨やお食事時にも安心
※国内手縫い仕立てです。
※お仕立て期間
:名古屋帯仕立て:約30日
:開き)仕立て・松葉仕立て:約40日
お盆・年末年始・ゴールデンウイークなどを挟む場合は1週間ほど余分にお日にちを頂きます。
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