【製作者】築城則子
【品質】縦糸:絹 緯糸:綿・絹
【染色】草木染
【製織】手織り
【生地幅】約40cm(裄丈:約73cm 1尺9寸5分まで対応可)
【着用時期】6月頃~9月(単衣・盛夏)
どこまでも交わることのない平行な線。
その無機質で単純な模様に命を吹き込み、躍動感さえ感じさせる迫力と風格を漂わせる布を生み出す。
その昔、盛隆を極めた夏の涼布「小倉縮」を蘇らせた築城則子氏の手業と感性、そして何よりも同氏の染織への情熱ゆえに成せる芸術作品を身にまとえば、安らぎと高揚という相反する感覚に包まれるに違いありません。
作品名【闇映(やみばえ)】
本品に名付けられた作品名「闇映」。漆黒の闇の中に射す光のように浮かび上がる色とりどりの縞模様が美しく映える様は、シャープなすっきりとした中にしなやかさが感じられるのは不思議としか言いようが有りません。
草木染によって様々な色の縞を、太さや間隔を変えて配されたデザイン性の高さは美しい着姿を演出し、無限に広がる自然の生命力が感じられます。
色とりどりの縞模様 草木染
地色の黒は藍にザクロを重ね染めされています。そして色とりどりの縞模様には、桜・梅・紫根、緑色は藍にウコンを、赤茶色はビワを用いて染められています。
実はそれ以外にも多種の草木が使用されているとの事で、それら天然染料の無限の色の深みが放つ渋く美しさは、化学染料では表現することの出来ない揺らぎを感じさせるのです。
植物が持つ有機的な何かが複合的に作用し、目に映る色の向こう側に更に別の色が存在すると言えばいいのでしょうか。それを説明する適切な言葉が見つからず人々は深みや味わいといった曖昧な表現をするしかないのです。
縦糸には非常に細い220デニールの絹糸を中心として縞柄の一部に84デニールの糸が用いられ、その縦糸は、精練されたものと未精錬の生絹(すずし)が併用されています。そして緯糸には綿の強撚糸と生絹とが打ち込まれています。※横縞が現れている部分が生絹が織り込まれている部分です。
その糸の変化が静かな水面にかすかに揺れるさざ波のようなポコポコとした細かな凹凸を生み出し、サラリとした手触りの涼しい布に仕上がるのです。
遠目には1色に見える縞にも濃淡が付けられており、奥行のある豊かな表情を漂わせます。
ほんのりとした透け感ですので、真夏だけでなく単衣のシーズンにもお召しいただけます。
縦糸には極細の220デニールの絹糸を中心として、縞柄の一部分に84デニールの糸を配し、緯糸には木綿の強撚糸と生絹が織り込まれています。
シャリっとして適度な張りがあり、非常に軽い織物に仕上げられています。
築城則子氏によって復刻された「小倉織」「小倉縮」
※本品は小倉縮になります。
・・・去門には。小倉ちゞみ来る人。挑燈持てつくばい。
井原西鶴「好色二代男」より
・・・あすは国入お嫁入二ツ道具の行烈に。毛鑓数鑓大とり毛波のちゞみの小倉より。糸はしんくのむすび紐だい笠たてかさお長刀。
近松門左衛門「日本武尊吾妻鑑」より
江戸時代 豊前小倉藩(現 福岡県北九州市)で生産され盛隆を極めた「小倉織」木綿織物は丈夫で破れにくく、上質な生綿を用いる事で美しい光沢を放つことから武士の裃として人気を博していました。その後、武士だけでなく庶民の間においても実用品として大変重宝されていました。また、夏の涼布として開発された「小倉縮」においても同様に人気を博していました。しかし時代の流れによって昭和初期にはその姿を消してしまったのです。
その小倉織を1984年に・小倉縮を1994年に微かな手掛かりを元に復刻させたのが本品の製作者である築城則子さんであり、現在においても小倉織・小倉縮の第一人者としてご活躍され多くの後継者を育てておられます。
築城則子プロフィール(遊生染織工房様ホームページより抜粋)