草木染で染め上げられた深みのある栗茶色の無地に綾織で表現された市松模様がコーディネートし易く、シンプルな中にも洗練された洒落さを感じさせ、織の着物から染の着物まで幅広く組み合わせてお楽しみいただけます。
民芸運動の父 柳宗悦
この絹布を語るうえで、柳家の歴史と信念を知らねばなりません。
染織家”柳崇(やなぎ そう)”さんの染織にたいする根幹をたどると、民芸運動の父とうたわれる”柳宗悦氏(やなぎ むねよし)”に行きつきます。
明治の頃に志賀直哉、武者小路実篤らとともに雑誌「白樺」を創刊し、ロダンやゴッホといった西欧美術を世に紹介したのが同氏の民芸運動活動の始まりです。
そもそも「民芸」とはいったい何なのでしょうか。
それは、庶民の生活から生まれた日常品の中にこそ美しさがあるという発想から生まれました。
伝統的な手仕事の素晴らしさを悟った宗悦氏は、その民衆の伝統技術を調査するため全国を巡る中で「民衆的工芸」の略語として「民芸」という言葉を作り運動としました。
宗悦氏は、沖縄をはじめ全国各地の工芸品を調査する他、「行状のすぐれた念仏者」の研究にも力を注ぎ、浄土思想として仏教と結びつけて「民芸美術」の基盤としました。
「無名の職人が作ったものが何故美しいのか」それは「信と美」の深い結びつきにあるとし、その考えは仏教美術へと深まりました。
そしてその宗悦氏の思想を染織の分野で担ったのが同氏の甥である柳悦孝・悦博兄弟であり、その悦博氏の子にあたるのがこの作品を作り上げた”柳崇氏”です。
崇氏の父”悦博氏”はほとんど独学で染織を学び、彼に学んだ染織作家の多くは国画会や民藝館展などで活躍されています。
全国を廻り自分の目で工芸の仕事場を見たり、一枚の裂から技術を習得していった悦博氏の感性は、何物にもとらわれない自由な発想を生み出す能力を培い、弟子に対しても多くを教える事なく彼らの感性に任せて育てていかれたようです。
柳崇氏も『父に教わったことと言えば、染のやり方くらいで染織のことはあまり話してくれなかった』と語られています。
糸作りや色の配合の技術的なことは教えられても感性はその人それぞれが独自に持っているものであり、それは教えられるものではなく独自で生み出す・自由な発想の中から自然に生まれてくるという考え方なのでしょうか。
自由奔放な中にも柳崇さんの技法は、どんな小さな工程でも精巧な理論に裏付けされており「理論を打ち立てて行動していくという気質」が柳一族の根幹にあり、その精巧な理論と生まれ持ったセンスともいえる感受性とが融合して初めて人の心を動かす作品が生み出されるに違いありません。
純国産絹 ぐんま200
素材である絹糸への拘りも強く、柳氏のオーダーにより、群馬県で飼育された国産繭(ぐんま200と呼ばれる品種)を使用しています。
※現在日本国内で流通している純国産絹は全体の1%に満たないと言われるほどに希少なものとなってしまいました。
世界遺産にも登録されている「富岡製糸場」で一躍有名になった国産繭の産地、群馬県で養蚕された繭(ぐんま200)。
徹底した品質管理の下で飼育されたお蚕さんから吐き出された絹の繊維は、”上質な光沢””しなやかさ”を持つとともに、色の染付が良いのが特徴で、草木染が放つ自然色の美しさを余すところなく伝えています。
生引き糸
この糸は「生引き(なまびき)」と呼ばれ、お蚕さんが生きたままの状態で繊維を引き出しています。
そしてその生引きされた繊維に柳崇さん自身が撚りを掛けて精錬し、実際に織り上げる糸に仕上げられます。
この糸作りを習得するまでには最低でも3年の年月が必要とされ、最初の3年間は糸作りしかさせてもらえないほどだそうです。
常に良いもの・自分自身が納得のいくものを生み出すには妥協を許さない。それが柳崇さんのこだわりでもあります。
手織りの温もり
とことんまで拘った絹糸を自らの手で糸にし手織りされた絹布は、柔らかで優しい風合いが生み出され”ふっくらとした弾力”があり、機械で製織された織物では味わえない温もりと安らぎが感じられます。
「手織りであれば何でも良いもの」いうわけで決してありません。そこに確かな技術がなければ単なる頼りない布になってしまい帯として使い物になりません。
熟練した技能が有ってこそ手織りの良さを味わうことが出来るのです。
ヨコ糸の打ち込み加減を絶妙に調節された手織物は、布に命が宿っているかのような生命の息吹を感じ、しなやかで触れているだけで温もりが心に伝わってきます。
草木染の深み
本品は、刈安・カテキュー・渋木・ログウッドの煎液を合わせたものを経糸・緯糸の両方に2回ずつかけて染め上げられています。
化学染料では出すことの出来ない草木染による色合いとは何なのでしょうか。
草木染料に僅かに混ざった天然の不純物の影響で、目の前に見える色の奥に更に重なり合った色が見えてくると言えばいいのでしょうか。
じっと見ているとそれが本当に何色なのかが分からなくなる感覚に陥ってしまい、それこそが草木染だけが持つ”色の深み”と言うものなのかもしれません。
綾市松織
綾織でシンプルな格子模様ではありますがシンプルだからこそ誤魔化しがきかない技術を要し、織の組織に変化を付けて斜め・縦・横に糸目を走らせ織り上げられた手織りの技とセンスに思わず見惚れてしまいます。
全国の着物愛好家から絶大な人気を誇る柳崇氏作の九寸名古屋帯。
現代染織のルーツともいえる柳家を中心として、柳宗悦の系譜の染織家が現在も多く活躍されています。
栗茶色無地の綾市松模様というシンプルなデザインと色合いは、様々な色柄の織の着物から染の着物まで幅広くコーディネートしてお楽しみいただけますので、柳さんのファンの方は勿論、今回初めて作品を目にするかたにとっても宝物のような一点になるに違いありません。
本品は美しいキモノ2021年秋号において二階堂ふみさんが着用されたお品です。
滅多に手にすることが出来ない柳崇さんの名品ですので是非お手元にお迎えいただければ幸いです。
スポットガーデン 筑摩和之
※写真と実物とはモニター環境などにより、若干異なって見える場合がございますので予めご理解ください。
※価格にお仕立て代は含まれておりません。
※お仕立てをご依頼の場合には、オプションからそれぞれの項目をお選びください。
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【お仕立てについて】
お仕立て期間:約20日
※年末年始 GW お盆など長期休暇を挟む場合は7日~10日ほど余分にかかりますのでご了承ください。
※国内手縫い仕立て
【九寸名古屋帯】
1「名古屋帯仕立て」5,400円
手先からお太鼓までを半分に折って芯を入れて仕立てる
※最も一般的なお仕立て方法です。
2「開き仕立て(裏地無し)」9,720円
手先を半分に折らずに全て平らにして芯を入れて仕立て、手先から胴巻きの部分に裏地をつけない
3「開き仕立て(裏地付き)」12,420円
2の開き仕立てで裏地(モス)をつける仕立て
※裏地の色はお任せになります。
※松葉仕立てをご希望の場合は「平(開き)仕立て」を選択頂き、ご注文お手続き時の店舗への要望欄(フリー記入欄)に「松葉仕立て希望」とご入力ください。
(帯ガード加工)
・雨やお食事時にも安心のガード加工:3,240円
※国内手縫い仕立てです。