染織作家 池田リサ 民藝美の継承者
確かな存在感を漂わせる粋な黒
草木染めのまろやかな輝き、天然色が奏でる調べ
確かな技術が織りなす眼鏡織のお洒落さ
生絹(すずし)が放つ清涼感
草木染 手織り 単衣・夏九寸名古屋帯
【製作者】池田リサ
【品質】絹100% 生絹(すずし・なまぎぬ)
【染色】地色:黒(化学染料) 柄:黄色・オリーブ(ゲレップ) 灰(矢車)
【着用時期】単衣・夏 5月頃~9月頃
※帯芯に黒を使用すればオールシーズン可納
【長さ】約530cm
池田リサ…現代染織界をリードする国画会正会員
卓越した技術と色彩センスが冴えわたる涼布 それが本作品「草木染 手織り生絹 九寸名古屋帯」です。
民藝運動の父とうたわれる柳宗悦氏(やなぎ むねよし)の甥にあたる柳悦博氏から染織を学び、自らの世界観を追求する池田氏の作品は人の心を静寂に導き そして温もりを与えてくれるのです。
深層心理の世界では負のイメージを連想させる黒という色からは正反対の清潔感や透明感といった純粋な美しさを感じてしまうのが不思議と言うしかない本作品
何故なのでしょうか。
黒は光を反射することなく全ての色を吸収し遮断します。と同時に、黒を取り巻くその他の色を引き締めて際立たせるといった効果を持っています。しかしそれは他の色を引き立てるといった控えめな脇役ではなく、黒が持つ存在感を上乗せするのです。ゆえに、黒をベースにした色使いというのは一歩間違えると見る人に重たさや不快感を与えてしまう危うさがあるのですが、色の組み合わせによって非常に心地よく目に優しく映るのです。それは白が持つ爽快さや清潔感ではなく、地に足がついた安定感の中に宿す透明感なのかもしれません。
池田リサさんと言えば独自に考案された板締め絣によるアーティスティックな作品を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。
しかしこのような浮織りの技法により眼鏡状の織模様を生み出す作品も得意とされています。
粋な黒地の中に3色使いの眼鏡織を絶妙なバランスで配された色彩感覚と空間の美しさは、重厚さの中にもホッと心が和む優しささえも感じてしまいます。
無地場という空間の使い方と色使いの妙は 女性作家さんならではの感性が可能にするのではないかといつも感心してしまうのです。肩の力が抜けているかのような それでいて豊かな抱擁力を感じると言いましょうか。とにかく安心感があるんです。
太陽が照りつける夏の装いに、涼を誘うしっとりとした大人の佇まい。主張し過ぎる事なくそれでいて目を奪われる本当に素敵な名古屋帯ですね。
生絹(すずし)の清涼感と味わい
お蚕さんが吐き出した絹の繊維はセリシンと呼ばれるタンパク質で覆われています。その物質は硬くお蚕さんを紫外線から守ります。その繭から繊維を引き出し数本を引き揃えて一本の糸に製糸されるのですが、その後このセリシンで覆われた糸を精錬と呼ばれる工程により取り除き白く輝く糸に仕上げられるのが一般的です。
しかし 敢えてこのセリシンを落とさずにシャリっとした張りのある糸のままの状態を生絹(すずし なまぎぬ)と呼び それによって製織する事で肌触りに独特のざらつきが出て肌に密着せず清涼感が生まれるとともに 渋く光る趣深い光沢を放つ織物になります。工芸品らしいこの風合いと渋さが夏の紬のお着物にマッチし自然と調和した着姿を演出してくれるのです。
●シャリっとした生絹の手触りで透け感が有ります。
2本の縦糸を並べその間に緯糸を挟み込むように製織し、隙間が開けられた夏向きの織物に仕上げられています。
草木染の深み 趣
地色の黒は化学染料で染められていますが、浮き織りの柄糸は草木染料が用いられています。
薄いグレーは矢車、黄金に輝く金茶色はゲレップで、そしてオリーブ色の糸はゲレップで金茶に染めた後にブルーの化学染料で重ね染する事でだされています。
草木染の不確かな揺らぎ、渋みのある光沢が黒地にしっとりと映えて大人の女性らしさを感じさせてくれます。
そして浮き織りによって糸が長く表面に出る事で縦糸との接地面が無くなり絹本来の艶やかさを放つのです。
眼鏡織の個性そして重厚感
高機で手織りされている本品は 緯糸を浮かせてぽこぽことした変化で柄を織り出す緯浮き織と呼ばれる技法で製織されています。そして経糸を密集させて緯糸を被せるようにする部分と平織の部分とに織分ける事で眼鏡状の織模様が出来上がります。(この製織技法は沖縄のロートン織に通ずるものがあります。)
柳宗悦より伝播された民藝の美
この絹布を語るうえで、柳家の歴史と信念を知らねばなりません。
本品の製作者であられる染織家”池田リサ”さんの染織の美にたいする根幹をたどると、民芸運動の父とうたわれる”柳宗悦氏(やなぎ むねよし)”に行きつきます。
明治の頃に志賀直哉、武者小路実篤らとともに雑誌「白樺」を創刊し、ロダンやゴッホといった西欧美術を世に紹介したのが同氏の民芸運動活動の始まりです。
そもそも「民芸」とはいったい何なのでしょうか。
それは、庶民の生活から生まれた日常品の中にこそ美しさがあるという発想から生まれました。
伝統的な手仕事の素晴らしさを悟った宗悦氏は、その民衆の伝統技術を調査するため全国を巡る中で「民衆的工芸」の略語として「民芸」という言葉を作り運動としました。
宗悦氏は、沖縄をはじめ全国各地の工芸品を調査する他、「行状のすぐれた念仏者」の研究にも力を注ぎ、浄土思想として仏教と結びつけて「民芸美術」の基盤としました。
「無名の職人が作ったものが何故美しいのか」それは「信と美」の深い結びつきにあるとし、その考えは仏教美術へと深まりました。
そしてその宗悦氏の思想を染織の分野で担ったのが同氏の甥である柳悦孝・悦博兄弟であり、その悦博氏が池田リサさんの師にあたります。
”悦博氏”はほとんど独学で染織を学び、彼に学んだ染織作家の多くは国画会や民藝館展などで活躍されています。
全国を廻り自分の目で工芸の仕事場を見たり、一枚の裂から技術を習得していった悦博氏の感性は、何物にもとらわれない自由な発想を生み出す能力を培い、弟子に対しても多くを教える事なく彼らの感性に任せて育てていかれたようです。
糸作りや色の配合の技術的なことは教えられても感性はその人それぞれが独自に持っているものであり、それは教えられるものではなく独自で生み出す自由な発想の中から自然に生まれてくるという考え方なのでしょうか。
池田リサ
1973年~柳悦博氏に師事
1977年 国画会工芸部新人賞受賞
1983年 国画会会友に推挙
1988年 東京 文春画廊にて個展
1989年 国画会会友優作賞受賞
1991年 イタリア フィレンツェに織物研修の為滞在
1992年 フランス カルカッソンヌの城内にてグループ展
1995年 国画会会員に推挙
民藝の美を継承し独自の世界観で高みを求める工芸染織作家 池田リサ氏の感性と技が詰まった夏の絹布 草木染の柔らかく優しい色目が安らぎを漂わせ 生絹のシャリ感が生み出す清涼感が暑い夏に涼を運びます。
夏の装いを少し贅沢に楽しまれてはいかがでしょうか。シンプルに着こなす夏だからこそ普段よりも上質な帯で貴女らしさを演出してください。
※垂れ先は無地でも柄でもお選びいただけます。
※お仕立てオプションより選択してください。
透け感のある織物ですので白の帯芯を入れると隙間から白が除き涼やかな見た目になります。
※写真と実物とはモニターや画像処理の関係上、若干異なる場合がございますので予めご理解ください。
※価格にお仕立て代は含まれておりません。
※お仕立てをご依頼の場合には、本ページに設置のオプションからそれぞれの項目をご注文と同時にお選びください。
【お仕立てについて】
※本品は夏用の帯芯を使用させていただきます。
単衣から袷の着物に合わせたい方は、黒の帯芯を入れられますと透け感・白味が消えますので通年お使いいいても違和感はございません。但し、夏向きの帯芯では有りませんので通気性が少なくなり盛夏には暑く感じられると思います。
黒の帯芯をご希望の場合は、ご注文のお手続き画面内のフリー記入欄に「帯芯 黒」とご入力して下さい。価格は夏帯芯と同額です。
【九寸名古屋帯】
1「名古屋帯仕立て」5,400円
手先からお太鼓までを半分に折って芯を入れて仕立てる
※最も一般的なお仕立て方法です。
2「開き仕立て(裏地無し)」9,720円
手先を半分に折らずに全て平らにして芯を入れて仕立て、手先から胴巻きの部分に裏地をつけない
3「開き仕立て(裏地付き)」12,420円
2の開き仕立てで裏地(モス)をつける仕立て
※裏地の色はお任せになります。
(帯ガード加工)
・雨やお食事時にも安心のガード加工:3,240円
※国内手縫い仕立てです。
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