染織工芸作家 上原美智子の世界
ただひたすらに糸を愛す
研ぎ澄まされた感性 実体を求めて記憶に残るものを
草木染 手織り 立涌九寸名古屋帯
南国にうっすらと雪化粧
単衣から夏 そしてオールシーズンお使い下さい
至福の満足感に心満たされます
【製作者】上原美智子
【品質】
経糸:絹100%(純国産 春繭 上州座繰糸)
緯糸:麻100%
【使用染料】インド藍・月桃
【製織】高機 手織り
【着用時期】5月頃から9月(単衣・夏)・袷まで
※着物通の方によっては通年お使いになられます。
【長さ】約490cm
上原美智子氏作・・立湧織 九寸名古屋帯
南国に降る雪のように 温もりの中に漂う幻想的な清涼感
ほんのりとしたベージュに紫といった天然染料が放つ優しい色目の中に織り込まれた白糸が まるで雪化粧の景色にも見え、何とも言えない趣き深さを感じさせてくれます。
単衣から夏のシーズン、そして袷の季節までオールシーズンお使いいただきたい九寸名古屋帯。
染織作家 上原美智子さんが生み出す極上の布 若き日の葛藤を経て 湧き出る情熱を立涌(たてわく)という地柄に込められたかような魅力あふれる作品です。
※立涌模様とは伝統柄の1つで水蒸気が湧き立つように見える事からその名が付きました。
底光りする上州座繰り春繭糸
糸にとことん拘る上原さん。 純国産の春繭から上州座繰機(じょうしゅうざくりき)で引かれた上質な糸をタテ糸に用いらた本品は、絹糸を完全に精練しないことにより シャリっとしてザラつきのある独特の風合いの織物に仕上げられています。昨年、上原さんご本人とお会いしてお話を伺った際にこう仰いました。
「春繭は秋繭に比べやはり上質です。そして上州座繰機で引かれた糸は何て言ったらいいのか・・そう 底光りするんですよ」
底光り・・絹が本来もつ奥底から湧き立つような美しさとでも言いましょうか 独特の表現方法ですので完全に理解することは出来ませんでしたが そういわれて眺めると確かにその魅力を感じるのは決して気のせいではないのでしょう。何より絹をこよなく愛する上原さんが感じられるのですから。上原さんは本当に無邪気で嬉しそうな笑顔でそう話されるのです。失礼かもしれませんが少女のような純心さと、まるで糸が自分の子供であるかのような ひょっとすると分身とさえ思っておられるのかもしれません。
本品はシャリっとしてざらつきのある肌触りなのですが それは生絹(なまきぬ)を完全に精練していない為です。
精練する前の絹繊維はとても硬いものです。絹はフィブロインという物質の周りをセリシンというタンパク質の一種でコーティングされています。繭の状態で紫外線などからお蚕さんの身を守るためです。このセリシンを精練と呼ばれる工程により落とすことで絹が持つしなやかなドレープ性と艶やかな光沢が現れます。
その精練を不完全に処理することでタンパク質が残りこのシャリっとして少しざらつきのある味わい深い織物に仕上がるのです。
そしてどの程度タンパク質を残すのかは上原さんの長年の経験によるものでそこにも強い拘りを持たれています。一般的には化学薬品によって精練されるのですが 上原さんは親しい陶芸家の方から陶器を焼き上げる際に残った木灰を譲り受け 水の中で掻き混ぜその上澄みを使って精練されます。今までの経験からどれくらいが丁度いいのかpH(ペーハー)の濃度を測りそれを用いられるのです。絹を愛する上原さんだからこそ天然の材料に拘り糸を労わることによって絹が持つ潜在能力を最大限引き出されているのです。
手間を惜しまず 美しさを追求する それが「100年後の人々に感動してもらえる織物を作りたい」という情熱であり譲れないプライドなのです。
私の前で見せてくれた少女のような笑顔とキラキラと光る眼差しとは裏腹に物作りへの執念ともいえる強い信念を感じさせるのです。
糸染めされる染料は沖縄の自宅の庭などで採取される天然の草木が用いられています。
ほんのりベージュの色は月桃で染め、薄紫の色はインド藍で染められています。
月桃でベージュに染まるのは理解出来るのですが、インド藍で紫に染まるというのが不思議だと思いませんか。
以前 上原さんにお会いした際に仕入れさせて頂いた立湧帯が紫とグレー主体のお色目だったので染料について尋ねたところ。
「赤紫もグレーも全て藍染なんですよ 配合は一切せずに藍単独で使っているんです」
藍染は藍色の濃淡では?と思いましたが上原さんは続けて
「発酵建てした本藍は使いません 藍の生葉を使って染めるんです 発酵建ての藍だと藍色にしか染まりませんが生葉だといろんな色に染められるんです。グレーなんかはとっても綺麗な色に染まります。」
藍染=藍色と単純に考えていましたが そうでは無かったんです。
植物の性質を理解し様々な色に染め上げるその知見や技術の高さに改めて感心するしかなかったことを覚えています。
立湧織
V字型を上下交互に並べた特注の筬を用いる事で立湧状の柄に織り上げられている本品。タテ糸が曲線になっており 織り目の開きが広い部分と狭い部分とが出来る事で 生地の表面に光と影のような立体的な奥行が生まれます。そしてセリシンを落とし切らないことで摩擦係数が増し このタテ糸の曲線がしっかりと固定されて左右に寄れないのだそうです。
上原美智子さんの代名詞とも言える「あけずば織」(あけず=蜻蛉 ば=羽) 蜻蛉の羽根のように薄く透明感のある 極細の絹糸で織り上げられた布 実物に触れてきましたが 天女の羽衣を思い起こさせるほどの薄さで触れようとしても自分の手の風圧で逃げて行ってしまうような そして全くと言っていいほど重さを感じないのに肌に心地よさをもたらしてくれているような不思議な感覚を覚えました。
※立湧織の名古屋帯ことを「あけずば織」の帯と私たち業界のものは言いますが、厳密には「あけずば織」は極細の糸で製織された布の事を指します。
実体あるものを生み出す意味を表現する織物との出会い
上原さんが生まれ育った沖縄の歴史と現実。自分自身の生い立ち。それらが複雑に絡み合って自分を見失いそうになった時・・・自分を見つける為に実体のあるリアリティーを求めた先に有ったものが織物 それが上原さんが織物に携わることになる入り口だったと語っておられます。第二次大戦を身をもって体験され片足を失った母親から幾度となく聞かされた事からまるで自分自身が体験したようにリアルに映像として刻まれた沖縄の悲しい歴史 東京での短大時代に沖縄へのその思いから学生運動や沖縄本土復帰運動などにも顔を出された中 アジテーション(扇動)という実体のない言葉だけの薄っぺらさに嫌気がさし 自分がやりたいことが見つからず一体何が出来るのだろういうコンプレックスが絡み合い 実体のあるものを生み出す事へその意味を求められた先に出会ったものが織物だったのです。
上原美智子 略歴
1949年(昭和24年)沖縄県那覇市に生まれる。
高校卒業後上京し大学卒業後1971年(昭和46年)民芸運動の父「柳宗悦」氏の甥にあたる「柳悦博」氏に師事し染織を学ぶ。柳氏は多くの弟子を取らず順番待ちの状態だったのですが、上原さんが沖縄出身だと知り運よく弟子に迎え入れられたのだそうです。柳宗悦氏が沖縄の染織に感動し沖縄の工芸品を広く世に知れ渡らせることによって沖縄処分以降衰退していった伝統工芸が復活したという歴史があったからこそ悦博氏が上原さんを弟子として迎えられたきっかけだったのでしょうか。
そして1974年(昭和49年)沖縄に戻り 第二次世界大戦で壊滅状態であった沖縄の染織を紅型染の城間栄喜氏や芭蕉布の平良敏子氏らとともに復興に尽力された「大城志津子」さんの元で沖縄の織物技法を学ばれました。
1979年(昭和54年)まゆ工房を設立し独立
その際にはお父様や公庫に頼み込み借金をし独立されましたがその返済に困り大変苦労されたという事です。それでも織物の世界で生きていきたいという強い信念が実り 作品が認められ 個展やグループ展を数多く行い 着尺や帯だけでなく「あけずば織」のショールの制作など和洋の世界で広くご活躍されています。
糸をこよなく愛し妥協を許さない強い信念をもって作品作りに取り組まれている染織作家 上原美智子さん。
国産の春繭を上州座繰機で引かれた特上の絹糸の底光りする美しさ 精練しきらないシャリっとした風合いが生み出す味わい深さ そして草木染の淡くて渋い色合い それぞれが絶妙に合わさり立湧織のお洒落さをより一層際立たせており まさに唯一無二の存在感を漂わせる九寸名古屋帯に仕上がっています。
本品は、上原さんの立湧帯では生産量が少ない、緯糸に麻が用いられているお品ですの大変珍しいのと同時に盛夏にもお使いいただける清涼感もございます。
単衣から夏の装いに そして袷の季節までオールシーズンお楽しみください。
※写真と実物とはモニターや画像処理の関係上、若干異なる場合がございますので予めご理解ください。
※価格にお仕立て代は含まれておりません。
※お仕立てをご依頼の場合には、オプションからそれぞれの項目をお選びください。
【お仕立てについて】
※単衣から夏をメインにお使いいただく場合は夏帯芯をお選び下さい。単衣から袷がメインの場合は通年用の帯芯をお選び下さい。
お仕立てオプション選択から選択してください。
選択されていない場合は夏用帯芯を使用させて頂きます。
【九寸名古屋帯】
1「名古屋帯仕立て」5,400円
手先からお太鼓までを半分に折って芯を入れて仕立てる
※最も一般的なお仕立て方法です。
2「開き仕立て(裏地無し)」9,720円
手先を半分に折らずに全て平らにして芯を入れて仕立て、手先から胴巻きの部分に裏地をつけない
3「開き仕立て(裏地付き)」12,420円
2の開き仕立てで裏地(モス)をつける仕立て
※裏地の色はお任せになります。
(帯ガード加工)
・雨やお食事時にも安心のガード加工:3,240円
※国内手縫い仕立てです。
※お仕立て期間:約3週間
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